私の現場日誌

家造りの確実にうまくいかなくなる方法

Date : 2013.02.05 / Category :

家造りの手順には決定的な正解はないのですが、ほぼ間違いなくうまくいかなくなる手順は存在します。 いくつものパターンがあるのですが最近多くなってきた営業手法をまずご紹介します。

《家造りはわからないことがいっぱいあります。私もよくわからないのでご一緒にお茶しながら夢や希望を話すことから始めませんか?》

一般工務店向けにローコスト住宅のコンサル指導をする会社が編み出した手法です。  他業種から転業してきた経験の浅い営業マンのための手法です。

今はSNSなどを利用すれば実際に会うまでは経歴などはわかりませんしネット上の簡単な回答はその都度しらべてからでも表面的な答えとしては十分です。

警戒感を緩和するために会社ではなく喫茶店などを利用するのも王道パターンです。

またこの手法の便利な点は実際に会ったその場では回答やアドバイスを一切することなくお施主の言葉にうなづいて “私も解らないんでこれから御一緒に考えましょう。きっといい方法が見つかりますよ。”と言ってしまえばこの会社がどんなものを作っているのか、どんな考えを持っているのかを一切語ることなくお施主の考えを聞き出せてしまいます。

あとは会社に戻ってから報告 会社(工務店)はお施主に対しフレーミング(無意識化の囲い込み)ができる一番合った商品や言葉を用意することができます。

なぜなら夢を語ってくださいと聞き出す手法とは実は夢が実現できないのはなにが障害になっているのかを聞き出す方法だからです。

迷った人ほど現実を知っています、言葉の端々からは実際に手の届く範囲と予算が読み取れてしまいます。

クリアできない障害を聞き出しているわけですから次回のアポイント時にはその回答を用意して行けば、他業種から転職したとしても営業はもともと売るのが仕事ですしまた往々にして迷っていたお施主は何らかの方向が見えると一度すべて話したことですので望んでいるものはこれだったと錯覚もします。 

ではなぜにこれが家造りに失敗する方法なのか。

それはこの手法を使う工務店 営業マンはそれぞれ家造りに対する経験が建売やパターン売りしかしてこなかった結果この手法を取らざるを得なくなってしまったことに陥ってしまっているからです。

この後どういう道をたどっていくかといいますと、何度か打ち合わせを繰り返していくうちにほぼ確実にお施主の知識・熱意が工務店・営業マンの知識を上回ってしまい、お施主はなんだか違和感を感じることに、そこで断ることができるか、ずるずるとそのままになってしまうかが運命の分かれ道となります。

うまく断ることができても間違いなく時間の無駄 その焦りからさらに不本意な家造りになってしまうことも

ただ私も単なる営業マンの悪口を書いているわけでもありません。彼らも決して悪気があるわけではありません。 会社としての方針なら従うしかないでしょう。

むしろこのような営業手法を使うことによってまともな建築の勉強の機会を失い 知識がないことを売り物にしたり事にはある意味同情します。

けれどこれでは誰も幸せにはなれません。 建築屋の家造りはお施主の幸せに奉仕することが最大の目的です。